

2012/01/25
ファッションの仕事をしていてやられたなと思うことがある。それは機能性とデザインのちょっとした工夫だけで、理にかなった今まで見たことのないようなアイテムを目の当たりにしたとき。あっーその手があったかと胸をうたれることがある。
名門ブランド「RUSSELL MOCCASIN/ラッセルモカシン」。アメリカ・ウィスコンシン州にて、設立から100年以上が経った現在においても、革の裁断から縫製に至るまで、製造の全プロセスが少数の熟練した職人による手作業によって行われている。ネイティブアメリカン由来の靴として知られるモカシンブーツは、皮をそのままぐるりと底を囲む構造が特徴で、ラッセルモカシン社はこの製法を採り入れ、現地のハンターたちに向けたブーツの製造をしたのが始まり。履き心地がよく丈夫な製品は評判を呼び、アウトドアシーンだけでなく、日本においてはファッションとしても非常に知名度も高いメーカー。
ラッセルのホームページには、以下の一文がある。
"You name it, we make it (ご要望に応じて、どんな靴でも制作できます)"
そのラインナップは非常に種類が豊富だが、生産数は非常に少ない為、別注モノなどは見たことがないものも多く人とかぶらないのも魅力。
そのラッセル社にバンブーならではの新しいアレンジが加わって作られた人気モデルの“ノックアバウト”はさらに他ではお目にかからないような仕様になっている。特徴としてはもともと水辺用として作られたため、簡単に靴を脱いだり、履いたりできる便利なローファーブーツ。
レザーはララミースエードと呼ばれる温かみのある素朴な雰囲気、スエードは脱ぎ履きしても伸びにくい上に、履き込み汚れを吸って黒ずんでくると味が出るので経年変化も楽しみなところ。
そして注目したいところは、同素材のレザーをアウトソールとシューズ本体の接着面にもう一枚入れて本体を包み込む技法(ソールより少し上の段まできている部分を参照してください)を採用している。これは接着率を高め、人によってずれてくるシューズのブレを押さえる。凹凸のある道では「ズレ&ブレ」が起き、バランスを崩す事で疲れる。固定感を高めることで「ズレ&ブレ」が少なくなり長時間の歩行を楽にする。またレザーを2枚重ねにすることで下からの水の浸入を防ぐ防水効果ある。レザーに水がたまって駄目になりにくいので長く使うことが出来きて、水辺や雨の日も安心。 ではなぜこのアウトソールと本体の接着面にもう一枚入れる製法が注目かというと、ラッセルといえばレザーで作ったアンクルソックスのようなものを内側に入れて縫い合わせる製法が有名で別注といえばこの仕様をよく見かけるが、バンブーではあえてそのオプションはつけていない。この靴は本来、脱ぎ履きし易さが長所。元々がシャフトも太くルーズフィット。だからジャストフィットでもカカトは抜けがちにしてある。この、内側にもう1枚レザーを入れる製法にしてしまうと、カカトがカチッとしてこのモデルの特徴をうまくいかせなくなる。
バンブー別注のアウトソールと本体の接着面にもう一枚入れるこの仕様は快適さと柔軟性を損なわない。正に経験があって分かっているからできる別注。また、ワイズは日本人が履きやすいEワイズ。あまりピタッとしたサイズ感で履くような物ではないし。太いパンツでゆるい感じで履くことが考えられた嬉しいワイズの選択。
ヴィジュアルは素材感とあいまって見た目もごつすぎるわけでもなく、控えめなわけでもない絶妙なバランスをもち、視覚だけでなく心がひきつけられるような佇まいは男のワードローブにあって欲しいセンスがムンムン。履き込むほどに増していく味わいと履き心地の良さは、ハンターたちを長年足元から支えてきた事を改めて実感させてくれる。特徴をよくつかんでいてそれをデザインに活かした、この別注ノックアバウトの後にも先にもない存在感はオリジナリティ溢れるバンブーならでは。そう、こういうのをやられたと言うのです。
WRITER
30才。中学時代からMADE IN USAのヴィンテージが好きで、千葉の古着屋に数年間勤務。その後フランス、イタリア、ベルギー、ドイツなどのヨーロッパ圏でのブランドバイイングに奔走し現在に至る。趣味は過酷な要素は一つも無いまったりキャンプ。夢は自家用クルーザーでカジキマグロを吊り上げてその場で食べる事。
